死んだ松の木 #32
僕は、休みの日や空いた時間を見つけるとトラウト釣りに川へ出かけます。
そして、「今日は釣れないなー」と見切ると、荷物を担ぎ散歩します。
そこで一本の真っ白になって死んでしまった松の木を見つけました。
僕はそこで考えます。
「どうして死んでしまった松の木が川のど真ん中に倒れているのか」と。
一番ありそうなのが、昨シーズンの冬になりかけの頃、運良く(悪く)川に向かって倒れたこの木が、上流から流れてきます。
極寒の冬ですから、川の水もだんだんと分厚く凍ってきます。
川底の浅いあたりから凍り、そこへこの木が打ち上げられたと、こういうことです。
他の説としては、流れながら凍った、または誰かが何かのために持ってきた、という説もありますが、それは可能性としては薄い。
真っ白になった死んだ松の木の上を歩いていると、
小さな"真っ白になった松ぼっくり"がくっついているのを見つけます。
上流から何km流れたか分かりませんが、
それはもうしっかりと枝にくっついています。
まるで入園したての幼稚園児がお母さんから離れられないように。
ここでまた新たな疑問が頭をよぎります。
「どうしてこんなにも真っ白な姿になってしまったのか」と。
きっと雪のせいですかね。
そんなことを考えながら、まだ雪の残る川岸を散歩していました。
しかしまあ、こんなにも頑丈にくっついている松ぼっくりをみると、
この木の中に今なお"生命"を感じざるをえませんね。